2017.12.23 スタッフブログ

エンジンオイルの選び方(基本編)

前回の記事(エンジンオイルのこと知ってますか?)で、快適なカーライフを送るためにエンジンオイルが重要なポイントとなることをお伝えしました。
そのエンジンオイルですが、実は車種や使用環境によって「最適なエンジンオイル」が違うんです。
今回は、そんな最適なエンジンオイルの選び方の基本編をお届けします。

エンジンオイルの選び方

「クルマを安全に走らせるために何が最適か」ということを最優先に考えましょう。
その際には、まず参考にすべきなのは次の2点になります。

  • 自動車メーカーが指定する粘度
  • 自動車メーカーが指定する規格(グレード)

それではこの2点をそれぞれ詳しくご紹介していきます。

粘度とは?

オイルは低温では硬く高温では軟らかくなる性質を持っています。
つまり、エンジンをかける前の冷えた状態では硬く、エンジンが温まった状態では軟らかくなります。
この硬さ・軟らかさのことを粘度で表現します。
粘度が高いほど硬く、低いほど軟らかいことを表します。
低温時・高温時それぞれの粘度はエンジンオイルによって異なり、粘度の違いによる特徴があるのです。

ここで知っておきたいのが、エンジンオイルにある粘度表記。
【○○W-△△】

こんな表記が必ずあり、ここにそのエンジンオイルの特徴が表現されています。
これは、SAE(アメリカ自動車技術者協会)によって分類されたものです。

まず前半の【○○W】の部分は、「低温時の粘度」を表しています。
10W、5W、0Wなどと数値で表現されていて、数値が少ないほど低温時の粘度が低くなります。
一般的に、「低温時の粘度が低いほどエンジンがかかりやすくなる」という特徴があります。
昔「バナナで釘が打てるほど寒い環境でも、固まらないオイル」のテレビCMを見たことはありませんか?(年代がバレますね(^^; )
つまり、低温時の粘度が低いということは、寒い環境でも硬くならないということです。
下の表を見ていただくと、数値が低いほど寒い環境に耐えうることが分かります。
ちなみに、「W」は「Winter(冬)」を表しています。

そして後半の【△△】の部分は、「高温時の粘度」を表しています。
30、40、50と、数値が大きくなるほど高温時の粘度が高くなります。
一般的に、「高温時の粘度が高いほど耐摩耗性・油膜強度が強くなる」という特徴があります。

粘度選択を誤ると?

必要以上に粘度の高いオイルを選択すると……

  • 出力の低下
  • 燃費の悪化

必要以上に粘度の低いオイルを選択すると……

  • 部品の損傷
    特に軸受けの損傷は致命的
  • 出力の低下

こんなデメリットが生まれます。

一般的に、高出力のスポーツカーやターボエンジン搭載車は5W-40などのオイルを、小排気量のクルマや日常走行が中心であれば、0W-20、5W-20といったオイルを使用すると燃費数値は良くなる傾向にあります。

ではご自身の車に最適なエンジンオイルを見分ける方法は……?
これはもう少しあとでご紹介します。
もう少しお付き合いください。

規格(グレード)とは?

エンジンオイルの性能を評価する規格は世界各地にあります。
その規格に認証されたものがそれぞれの認証マークを取得して、世に送り出されています。

主なものを挙げてみます。

APIAmerican Petroleum Institute)
米国石油協会

  • 自動車エンジンオイルの代表的な性能規格
  • 様々な項目で基準を設け、全ての試験には膨大な費用が必要
  • 正規API品の開発には多くの時間と経費がかかるため、オイル成分は各社極秘扱い

ILSAKInternational Lubricant Standardization and Approval Committee)
国際潤滑油標準化認証委員会

  • 日米の自動車工業会が制定
  • API規格+省燃費性能の評価

ACEAAssociation des Constructeurs Europeens d’Automobiles)
欧州自動車工業会

  • ヨーロッパにおける自動車エンジンオイルの性能規格
  • 新排ガス規制 EURO5対応エンジンのための新規格を制定
  • ロングドレイン(長距離・長期間)志向

自動車の技術や環境基準の進化とともに、エンジンオイルの規格も進化しています。
ご自身が乗られている車種・年代・利用環境によっては、最新のオイルが最適と言えない場合があるのです。

結論:最適なエンジンオイルを選ぶには……

大変お待たせしました。
ここからが結論です。

欧州車では特に、メーカーが承認したエンジンオイル(メーカーアプルーバル)があります。
自動車の性能維持に関する基準以外に、環境問題に関連する省燃費・排出ガス・ロングドレイン性が評価されているものです。
欧州車メーカーはエンジンを改良するたびにオイルに対する要求を独自に設定していて、前述のACEA規格に自社の要求項目を追加したオリジナルな企画を設定しています。

実は、結論は冒頭に書いてある通りです。

  • 自動車メーカーが指定する粘度
  • 自動車メーカーが指定する規格(グレード)

この2点を正しく理解し、最適なエンジンオイルを選択しましょう。
私たち整備士は、日々新しい情報を習得し、お客さまに最適なエンジンオイルを提案しています。
お気軽にご相談ください!

それでは次回、第三回目は「エンジンオイルの選び方(応用編)」をお送りします。